先生に言われた印象に残っている言葉〜歌うように弾くこととは〜
2021.06.17

こんにちは。葉加瀬アカデミー専属バイオリニストのAyaです。

バイオリンを習っている方、習っていた方は「先生に言われた印象に残っている言葉」ってありますか?
先生から自分の予想外の答えが返ってきたり、目から鱗のことを教わったりと色々あると思います。
今回は、私自身が先生に言われて印象的だった言葉「歌うように弾くこと」とはどういうことか考えていきたいと思います。

【先生に言われた印象に残っている言葉】
大学時代の恩師には、大学受験の数ヶ月前に師事し始めました。
それまで師事していた先生には「テンポを揺らしてはいけない」「テンポ通りに弾けばいい」と言われており、メトロノームのような感覚で弾いていてそれが正しいとまで思っていました。(今考えると、その先生の仰ることも大切なことだとは思います。)

さて、大学時代の恩師の前で初めて曲を弾いた時の言葉が衝撃的すぎて印象に残っています。

「あなたは楽譜通りしっかり弾けているけど、色がないのよ。人間が弾いている以上、感情や色が音に乗らないと音楽とは言えない」
「この部分は赤でも、真っ赤・くすんだ赤・ワインレッドなのか、どういう赤で表現したら良いと思う?」
「このフレーズは男性が歌っている、対話であのフレーズは女性が歌っているのをイメージしたらどういう音になる?」

この言葉で、私の音楽に対する印象や考え方が180度変わりました。初めてのレッスンの1時間で、先生のお言葉1つが私の音楽をみるみる変えさせて下さったのを今でも忘れることはありません。

【バイオリンを弾く上で大切なこと】
①音をイメージすること
「こういう音が出せるようになりたい」「あのアーティストのようになりたい」など、自分の中で理想の音があると良いですね。

②好きなアーティストや曲を見つけること
好きなアーティストや曲を見つけると、その曲を聴くことに没頭すると思います。それってとても大切なことなんです。「BGMで聴く」のと「音色や弾き方を意識して聴く」のとでは全然違います。聴くことで表現の仕方や音楽の持っていき方を吸収することができます。

③楽譜の分析をすること
大学の恩師に出会ってから、新曲を弾く時には必ず楽譜の分析をしていました。

・「曲のできた背景」→作曲された時代は日本では何時代か、作曲家の生い立ちなどを調べる。
・「喜怒哀楽」→場面ごとの表情、どんな音色で弾くかイメージする。
・「色彩」→楽譜に書いてある曲想記号があればそこからイメージする。曲全体のカラーをイメージしてもOK!
・「物語」→自分なりの物語を作ってしまうということをよくしていました。楽譜に言葉で書いてイメージしながら練習すると、ドンピシャでハマる所もあれば違うなと考え直すこともありました。これはお勧めです!

④歌うこと
楽譜を見て弾きたくなるのは当然のことですが、弾くのと同じくらい「歌うこと」も大切です。
まずは楽譜を声に出して歌ってみます。「歌えないフレーズや歌った時に歌えない箇所がある所は楽器で弾くことはできないのよ」という恩師の言葉に納得している自分がいました。「弾けない箇所=どうやって弾くかを迷っている」だったのです。それからというもの、楽器を持って声に出して歌いながら、あるいは音源を流しながら左指を動かす練習をしていました。

⑤音楽の聴き比べをすること
表現力が足りない私はとにかくフレーズごとに音楽の聴き比べをよくしていました。CDによって表現が違うので、自分が好きな表現を真似て曲を弾いていました。

【歌心はどうやって身につけるか】
①「楽譜を見て歌う」「音楽の聴き比べ」
私の場合、楽器を演奏することよりも「楽譜を見て歌う」「音楽の聴き比べ」の方を重要視して練習していました。
楽譜を見て歌えるようになると、体が反応して自然に指が動いたり、何小節フレーズで取ったら良いのか分かるようになります。そして、少しでも楽譜が理解できるようになると(まずは少しで良いんです!!)、音楽が心から「楽しい」と思えるようになります。やはり、具体的にフレーズごとにイメージを持つと音にしやすいのです。

②ピアノ譜や総譜を見ながら音楽を聴く
バイオリンの楽譜だけでなく、ピアノ譜や総譜を見ながら音楽を聴いたり歌ったりすることをお勧めします。バイオリンに対してピアノや他の楽器はどのように動いているのか・伴奏を聴くべき箇所・ここはバイオリンが強調する箇所などと、理解するだけでも弾きやすさや合わせやすさが違ってきますよ。

③歌手の歌い方から「歌心」を学ぶ
歌手が表現する時の息の使い方や、どういう強弱をつけて歌っているかを注目して聴いて見てください。バイオリンでいうと、どこで息を吸って吐くか・弓を返すタイミング・音の強弱の付け方と同じことです。

Ayaのお勧めは、演歌のヴィブラートです。
演歌のヴィブラートは、かけ始めのタイミングやどのくらい揺らすのかがとっても絶妙で、バイオリンでヴィブラートをかける時の参考になります。「ヴィブラートを意識して聴いてみよう」と思いながら聴くと、ヴィブラート部分が不思議としっかりと聴こえるようになって面白いので、機会があれば演歌を聴いてみてください。そこから歌心を学んで自分の音楽表現に生かしていけるでしょう。

また、葉加瀬校長も歌うように弾くことについて、どういう歌い方が良いかを「Lesson73-27-01 船上にて」や「Lesson73-32-01 瑞風」の解説動画で仰っています。

【どういう演奏が人の心を動かすか】
バイオリン奏者の演奏を「超絶技巧がすごい、重音が綺麗、テンポが速く弾ける」などと表面上だけで見て「上手だな」と思うことってありませんか?世間からはそう思われがちですし、もちろん技術は大事なのですが、バイオリンを弾く上で大事なことは「バイオリンに対しての気持ち」「演奏で自分の気持ちをどうやって人に伝えるか」です。

例えば、完璧な演奏テクニックで演奏をしたAさん。演奏技術はまだまだこれから磨いていく余地ありだけれど、楽譜の隅々まで分析して自分の気持ちを込めて演奏をしたBさん。どちらの演奏が感動すると思いますか?私は後者だと思います。心を込めて弾くと、1音1音、休符まで人に伝わりますし、気持ちは演奏に乗ります。

私も経験がありますが、悩んでいる時の音・楽しいことがあった時の音など、私の喜怒哀楽が音に乗ってしまっていたようで、先生から「何か悩みがあるの?」「良いことあった?」などとツッコミがあったこともあります。

まずはご自分が楽しんで弾くことを意識してみてください。

いかがでしたか?
表情豊かな音楽は聴いている人の心を動かします。また、楽譜に書いてある細かい所まで分析できると表現が楽しくなってきます。

まずは弾く前にどんな音で、どんな気持ちで弾きたいかをイメージしてみてください。
声に出して歌ってイメージを膨らませるのも良いでしょう。そして、音楽の聴き比べは地味な作業と思われがちですが、とっても大切なことです。自分の感性も磨かれますよ♪

※この記事は、葉加瀬アカデミー専属バイオリニストAyaさんが書いた原稿を、担当者が編集したものです。

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